
新しい豆を買ってきた週末は、少し気が重い。
前の豆の挽き目から当たりをつけて1杯淹れ、苦すぎたら少し粗く、薄ければ少し細かく。ダイヤルの目盛りは「このあたり」としか教えてくれず、2杯目、3杯目と豆だけが減っていく。やっと決まった設定は、次に別の豆を挟んだ瞬間にわからなくなる。付箋にメモを書き、スマートフォンに写真を残し、それでも前回の味にたどり着けない。最初は「面倒」だった作業が、そのうち「うんざり」に変わる。
おまけに、挽き終わるたびに静電気で粉がミルの口やカウンターに張りつく。
LAYBIRDの「Nexus 64X」は、この挽き目探しを「数字を選んで呼び出す」作業に変えるための電動コーヒーミルだ。
挽き目を「目盛り」ではなく「数字」で動かす
一般的な電動ミルは、ダイヤルを回して2枚の刃のすき間を変える。どこまで回したかは、手の感覚と目盛りが頼りだ。
Nexus 64Xは、このダイヤルを持たない。刃の位置を動かすのは、1段ずつ決まった量だけ回る「ステッピングモーター」。プリンターの印字ヘッドを正確な位置へ送るのと同じ種類のモーターだ。挽き目は320段階あり、1段で刃が動く量は約2.5マイクロメートル(メーカー公称)。髪の毛1本の太さ(約0.07mm)のおよそ30分の1にあたる。
つまり挽き目は「このあたり」ではなく「240番」のような数字になる。数字なら、書き留めることも、あとで寸分たがわず戻すこともできる。
何が便利になる?
1. 新しい豆でも、最初の1杯を「推奨値」から始められる

本体の「Smart Grind」機能では、淹れ方(トルココーヒー、エスプレッソ、マキネッタ、ハンドドリップ、フレンチプレス、水出し)と豆の焙煎度(浅煎り〜深煎りの5段階)を選ぶと、挽き目と回転数の目安が表示される(メーカー説明)。
ゼロから手探りする必要はなく、目安から少しずつ詰めればいい。納得のいく設定ができたら、挽き目・回転数・時間をまとめて「お気に入り」に保存できる。保存できるのは50件まで。豆を替えても、以前の豆に戻っても、選ぶだけで前回と同じ条件で挽ける。
回転数も毎分600〜1,500回転の間で変えられ、淹れ方に合わせた回転数をレシピの一部として保存できる(メーカー説明)。挽き目と回転数をセットで記録できるのは、ダイヤル式にはない部分だ。
2. 粉の飛び散りと、ミルの中に残る粉を減らす
静電気の対策は、挽く前・挽いている最中・挽いたあとの3段構えだ(メーカー説明)。
挽く前は、豆を入れる投入口のふた「MistLid」に組み込まれた霧吹き(容量7mL)が、豆に細かい霧をかける。コーヒー好きが霧吹きで豆を湿らせてから挽く、あのひと手間をふたに組み込んだ形だ。挽いている最中は、粉の出口付近にある2つのプラズマイオン発生装置が静電気を打ち消す。挽き終わったら、本体横のノッカーを指で叩いて出口の粉を落とす。
さらに、画面の「クリーン」を押すと、刃を逆回転させて回転を上げ、遠心力で中に残った粉を吐き出させる。
ミルの中に粉が残ると、入れた豆と出てくる粉の量がずれ、レシピを再現しにくくなる。粉の片付けの手間を減らすだけでなく、1のレシピ管理を生かすための仕組みでもある。
3. 画面を外して、手元で操作できる
2.8インチの丸いタッチ画面「BrewPal」は、本体から取り外せる。外してもBluetoothでつながったままなので、手に持ったまま挽き目を選び、スタートできる(メーカー説明)。画面側には600mAhのバッテリーが入っている。
横倒しの本体は、置く台の高さによって画面が目線より下にくる。メーカー自身がFAQでそう認めたうえで、外して手元に持ってくればいい、と説明している。
画面を外すと、刃の入った前側のユニットが工具なしで抜ける。刃まわりの掃除や、将来の刃の交換もこの手順で行う。
今使っているものと何が変わる?
これまでの選択肢は、腕が痛くなるまで手挽きミルを回すか、電動ミルの目盛りを前にして「前回はこのあたりだった気がする」と自分の記憶と格闘するか。どちらも、最後は勘と根気が頼りだった。
| 手挽きミル | 一般的な電動ミル | Nexus 64X | |
|---|---|---|---|
| 挽き目の再現 | △ 目盛り頼み | △ 目盛り頼み | ○ 数字で指定 |
| 設定の保存 | × できない | × できない | ○ 50件まで |
| 最初の目安 | × 自分で探す | × 自分で探す | ○ 推奨値あり |
| 静電気対策 | △ 機種による | △ 機種による | ○ 3段構え |
| 挽く手間 | × 腕が疲れる | ○ ボタンだけ | ○ ボタンだけ |
| 大きさ・重さ | ○ 小さく軽い | ○ 機種による | △ 7.3kg |
| 価格 | ○ 手頃 | ○ 幅広い | △ 約7.5万円〜 |
弱点は大きさと重さだ。幅378.5mm×奥行き125mm×高さ313mm(大きいホッパー装着時は338mm)で、重さは7.3kg(メーカー公称)。幅はA4用紙の長辺より8cmほど長く、重さは2リットルのペットボトル3本半ほど。本体はアルミのダイカスト製で、キッチンの隅に気軽に置ける大きさではない。置き場所は先に測っておきたい。
メーカーはページ内で、同じ64mm級の刃を持つ他社の電動ミル(ページ内の表示価格で$599〜$1,495)と機能を比べている。デジタル制御の挽き目調整、推奨値、レシピ保存、取り外せる画面をすべて持つのは自社だけ、という主張だ。比較の中身はメーカーによるもので、本記事では検証していない。なお、その比較表では挽き目が「400段階」と書かれており、本文とFAQの「320段階」と食い違う。本記事ではFAQの数字を採った。
コーヒーはかりのメーカーが、刃を共同開発して作った
LAYBIRDは、コーヒー用のはかりやタンパーなど、エスプレッソまわりの道具を作ってきたブランドだ。Kickstarterには2025年、磁石で付け外しできるコーヒースケール「MagAttach」で登場した。

ミルの味を大きく左右する刃は、LEBREWとの共同開発だ。「Sweet Profile」と名付けられた64mmのステンレス平刃(440Cステンレス)で、甘さ・クリアさ・ほどよいコクを狙ったという。エスプレッソからハンドドリップまで、刃を替えずにまかなう設計だ(メーカー説明)。
メーカーは、細挽き・中挽き・粗挽きの3つの設定で挽いた粉の粒の大きさを測り、中央値がそれぞれ442・653・933マイクロメートルと、段階的にきれいに分かれたとするデータを掲載している(600・950・1,300回転の3条件で測定)。
ひとつ割り切りもある。FAQによると、推奨値を出すSmart Grindは、この純正の刃に合わせて調整されている。刃を他社製に替えた場合に推奨値がどこまで当てになるかは、書かれていない。

横倒しの円筒という形は、スケッチと試作を重ねた末に決まった。前から刃、モーター、画面が一直線に並ぶので、画面を外せば前から刃まで一気に手が届く。3の「画面を外して掃除する」仕組みは、この形だから成り立っている。
開発状況と信頼材料
LAYBIRDの前作MagAttachは、1,059人から約8.9万ドル(達成率4,430%)を集め、リワードの発送まで完了している。Kickstarterでのプロジェクトは今回が2件目だ。クリエイターの所在地はアメリカ・デラウェア州ドーバーとなっている。
今回のNexus 64Xは、目標8,000ドルに対して約20.3万ドル(達成率約2,535%)、支援者384人を集めている(2026年9月26日時点)。Kickstarterの編集部が選ぶ「Project We Love」にも選ばれた。
量産はまだ始まっていない。ページのタイムラインでは、2026年4〜8月に最終検証を終え、10〜11月に量産と品質検査、12月に発送という流れだ。リスクの説明では、経験のあるミルの製造会社と組み、発売前に量産前のサンプルを確認したとしている。ただし、どれも予定であり、FAQでも「早ければ12月」という書き方にとどめている。
安全規格については、アメリカのFCCとヨーロッパのCEの試験・認証を量産前に完了させる予定と書かれている。日本のPSEについては記載がない。
価格・配送・注意点
価格は以下のとおり。
| プラン | 中身 | 価格 | 割引率 | いつまでか |
|---|---|---|---|---|
| Launch Day Special ローンチ記念 | 本体1台 | 約7万3,600円 ($469) | 41% | 9/25まで (終了) |
| Super Early Bird 超早割 | 本体1台 | 約7万5,200円 ($479) | 40% | 先着100個 |
| Early Bird 早割 | 本体1台 | 約7万7,600円 ($494) | 38% | 先着100個 |
| KS Special KS特別価格 | 本体1台 | 約7万9,900円 ($509) | 36% | 先着100個 |
| Special Duo 2台セット | 本体2台 | 約14万4,100円 ($918) | 43% | 先着40個 |
ローンチ記念プランは9月25日で受付を終えており、いま選べる最安は超早割の約7万5,200円($479)からだ。超早割が埋まると、早割、KS特別価格の順に値段が上がっていく。
同梱物は、本体、2.8インチの取り外せる画面、霧吹き付きのふたと1回分用ホッパー(約25g)、粉を受けるカップ(58mm径のアルミ製・40g)、電源ケーブル、説明書。大きいホッパー(約250g)も同梱物の画像に写っているが、「Day 1 exclusive(初日限定)」と注記があり、いまのプランで付くかは読み取れない。支援前に確認しておきたい。コーヒー用の小型掃除機やスケール、タンパーなどは別売のアドオン($12〜$64)だ。
日本の家庭用コンセントで使えるかも確認しておきたい点だ。仕様では電圧が「100〜120V・60Hz」と「220〜240V・50Hz」の2種類で、キャンペーン終了後のアンケートで選ぶ。電源ケーブルは届け先の国に合わせたものが付く。ただし、100Vの仕様は60Hzと書かれており、東日本の50Hz地域で使えるかは記載がない。東日本に住む人は、支援前にクリエイターに確かめたい。動作音の記載もない。
配送は日本を含む世界各国が対象。送料の金額はリワードの説明に書かれていないので、支援の手続きで日本を選んだときの金額を確かめたい。EUの支援者には付加価値税をLAYBIRDが負担すると明記されているが、それ以外の国の輸入関税などは届け先の国の規則に従うとされている。日本で受け取る際に、消費税などがかかる可能性がある。
保証は、届いた日から12か月の限定保証(通常の家庭での使用で、製造上の不具合が対象)。返品・返金の条件は記載がない。
キャンペーンの締切は2026年10月24日(土)21時59分(日本時間)。目標金額に届いた場合だけ決済される「All or Nothing」方式で、目標はすでに達成している。お届けは2026年12月の予定だ。
豆を替えるたびに、ダイヤルの前で首をかしげていた週末。その時間が、画面で数字を選ぶ数秒に変わる。Nexus 64Xが売り込んでいるのは、浮いた時間と豆のぶんだけ、次の1杯を楽しむ余裕だ。


