「なんか反応が遅い気がする」で始まり、そのうちスティックが少しずつ勝手に動くようになり、ペアリングのたびにボタンの組み合わせを思い出す羽目になる。ゲームコントローラーの「地味な不満」は、一つひとつは我慢できても、積み重なるとじわじわストレスになる。

「GENKI MANTA」は、入力の遅れ・スティックのヘタり・面倒な接続という3つの不満を、本体に内蔵した専用OSでまとめて解決しようとしているコントローラーだ。

本体だけで設定が完結する、コントローラーの中の小さなOS

MANTAには2.79インチのカラー液晶が内蔵されていて、「MantaOS」という専用OSが動いている。プロファイルの切り替え、スティックやトリガーの微調整、ペアリング管理、マクロ作成まで、スマホアプリやPCソフトを一切開かずに本体だけで完結する。「設定のためにアプリを探す」という工程そのものがなくなる、というのが最大の特徴だ。

何が便利になる?

①ボタンの反応が、指が底まで沈み切る前に始まる。一般的なボタンは、電気接点に触れて初めて「押した」と認識される。MANTAの「Pulse Buttons」はボタン全体の押し込み量をアナログ的に検知していて、指がまだ動いている途中、底に着く前の段階で入力を発生させられる。格闘ゲームの反応速度やFPSの押し始めのラグに直接効いてくる部分で、反応点(どこまで押したら入力とみなすか)は好みの深さに調整できる。

②スティックのヘタり・ドリフトに、工具なしでその場で対処できる。長く使ったコントローラーのスティックが、触っていないのに勝手にキャラクターを動かす「ドリフト」現象。多くは、電気接点をこすりながら検知する方式の摩耗が原因だ。MANTAのスティックは接触しない磁気式(TMR)センサーを採用していて、こすれによる摩耗そのものが起きにくい。さらにスティックの重さ(テンション)を軽め・重めと無段階に、工具や分解なしでその場で調整できる。

③接続もチューニングも、スマホやPCを開かずに本体だけで完結する。サードパーティ製コントローラーのペアリングは、「ボタンを何秒押す」「LEDが何色に光ったら成功」のような暗記ゲームになりがちだ。MANTAは接続状態や登録済みデバイスの一覧を本体の画面にそのまま表示し、そこから再接続や名前変更、削除まで行える。プロファイルは最大8個まで保存でき、スティックの感度からマクロの割り当てまで、すべて本体単体で完結する。

今使っているコントローラーと何が変わるか

スペックの羅列だけでは伝わりにくいので、よくある汎用コントローラーと並べてみる。

項目よくある汎用コントローラーGENKI MANTA
ボタンの入力方式電気接点に触れて初めて入力(接点摩耗あり)Pulse Buttons(アナログ検知、反応点を調整可能)
スティックの方式接触式が多く、摩耗によるドリフトが起きやすい非接触の磁気式(TMR)、テンションも無段階調整
設定・チューニング専用アプリやPCソフトが必要なことが多い本体内蔵の2.79インチ画面で完結
振動(ハプティクス)片側1基のモーターが一般的左右独立×2基の「Maglev Haptics」
トリガーオン・オフ固定が中心3段階のトリガーモードを切替可能

モノ好き向けの雑学:振動もスティックも、仕組みから見直している

MANTAの振動機構「Maglev Haptics」は、左右のグリップにそれぞれ独立したモーターを内蔵し、ボイスコイル(スピーカーの駆動方式と同じ仕組み)で磁気浮上させた重りを動かして振動を作る。従来の偏心モーター方式の「同じブーンという振動の強弱」とは違い、コツンという一撃、連続パルス、持続振動などを描き分けられ、立ち上がりと収まりが早いぶん「当たった瞬間」がはっきり伝わる。スピーカーに近い駆動方式なので、原理的には音を鳴らすことさえできるという。

スティックのドリフト対策も、根本の検知方式から変えている。一般的なスティックは、可動部が抵抗体の上をこすりながら位置を検知する接触式が多く、この「こすれ」自体が経年劣化の主因になりやすい。MANTAは非接触の磁気式(TMR)センサーで位置を検知するため摩耗の原因そのものが少なく、さらに内部のシリコンリングが軸を滑らかに支えることで、こすれによるガタつきも抑えている。ちなみに開発チームは、方向キーが格闘ゲームの入力(コマンド入力)にきちんと耐えられるかまで作り込みの基準にしているそうだ。

開発状況と支援状況

開発元のGenki(Human Things)は2018年、Nintendo Switch向けのBluetoothオーディオアダプター「Genki Audio」でクラウドファンディングにデビューして以来、これまでに8件のクラウドファンディングプロジェクトを成功させてきた実績がある。Covert Dock・ShadowCast・Waveform・SavePointなどの製品を送り出し、工業デザインやガジェット分野で複数の賞を受賞している。開発チーム自身、今回のMANTAを「これまでで最も野心的なコントローラー」と位置づけていて、試作機は北米・欧州・アジア各地のゲームイベント(Gamescom、PAX West、東京ゲームショウなど)を巡回しながら、来場者のフィードバックを反映して最終調整を続けているという。キャンペーン終了後も月2回のペースで開発状況を報告すると明言しており、透明性を重視する姿勢がうかがえる。

この記事の執筆時点(2026年9月11日)で、目標金額10万ドルに対し支援総額は93万9,085ドル、達成率は939%、バッカー数は3,880人に達している。とはいえ、ハードウェア・OS・ハプティクスまで一から作り込む野心的なプロジェクトであることに変わりはなく、開発チーム自身も「スティックの感触、トリガーの挙動、ボタンの反応、ハプティクス、レイテンシーの一貫性、互換性、ソフトウェアの作り込み、量産の公差など、細部を詰める最終段階が一番大事な時期」だと率直に説明している。支援を検討する場合は、購入前に必ずKickstarterの公式ページで最新の進捗を確認してほしい。

GENKI MANTAの同梱物。本体、トラディショナルD-padとサテライトディッシュD-pad、ケーブルロック用アタッチメント、長めのUSB-Cケーブル、2.4GHz USBレシーバー、着脱式リアパドル一式

価格・配送・支援にあたっての注意点

もっとも安い「Super Early Bird」プランはすでに売り切れており、記事執筆時点で申し込める主なプランは以下の通り(価格は執筆時点、為替レート1ドル=155円換算の目安)。

プラン価格内容
Early Bird$199(約3万850円)本体1台
Founder’s Edition$349(約5万4,095円)本体1台・シリアルナンバー入り限定カラー(全1,000個・残りわずか)
Super Early Bird Duo$369(約5万7,195円)本体2台

配送先は世界各国で日本も対象になっているが、注意したいのは送料の扱いだ。今回のプレッジ金額には送料が含まれておらず、キャンペーン終了後に届くアンケート(サーベイ)で別途請求される方式になっている。開発元は港湾ストライキや関税の変動など国際物流の不確実性を理由に挙げていて、最終的な総額は支援後に確定する点は必ず頭に入れておきたい。

配達予定は、開発元の楽観的な見積もりで2027年1月、余裕を持った見積もりで2027年1月〜4月ごろ(リワードページ上の目安表示は2027年2月)。キャンペーンの締切は2026年10月2日で、目標金額に達した場合のみ課金されるAll-or-Nothing方式となっている。

クラウドファンディングという性質上、実際の仕様や配送時期、送料は変更される可能性がある。支援を検討する場合は、購入前に必ずKickstarterの公式ページで最新の情報を確認してほしい。

反応の遅れも、ヘタったスティックも、ペアリングのたびのボタン当てゲームも、一つひとつは「まあいいか」で済ませてきた不満かもしれない。それを全部まとめて、コントローラー1台の中で終わらせにいくのがMANTAだ。