玄関の鍵を締め忘れた気がして戻る。ペットボトルの蓋が固くて開かない。棚のネジが少し緩んでいるのに気づいても、工具箱まで取りに行くのが面倒でそのまま放置する。どれも大した作業ではないのに、手元に「ちょうどいい道具」がないというだけで、小さなストレスがじわじわ積み重なっていく。

「RIXEL」は、この「その場でサッと使える道具がない」という日常の小さな不満に、チタン削り出しの1本で応えようとしているEDC(Everyday Carry)マルチツールだ。

RIXELのトリチウムチューブスロットが暗闇の中で緑色に光っている様子

バールを、リボルバーのように回して切り替える

一般的なマルチツールは、必要な刃やビットを探して開いたり、スライドさせたりする構造が多い。RIXELが採用したのは、リボルバー拳銃の弾倉のように、先端のチャンバーを回転させて機能を切り替える方式だ。チタン合金をCNC削り出しで加工した本体の中に、複数の機能を回転式に格納している。見た目のギミック感だけでなく、使いたい機能をひねって出す、という操作そのものが道具としての完成度を支えている。

何が便利になる?

①工具箱を開けなくても、その場で大抵のことが片付く。2〜11mmの六角レンチ、スポークレンチ、上部・側面の2系統に分かれたドライバーポート、栓抜き、そしてチタン製のバール(こじ開け・てこ)機能まで1本に集約されている。棚のネジ締め、自転車のスポーク調整、飲み物の栓抜き――バラバラの道具を集める前に、ポケットの1本で終わっている。

②長さの確認も、その場で済む。本体にはcm/inchの両方に対応したデュアル目盛りが刻まれており、定規代わりに使える。荷物のサイズを測る、DIYで木材の長さを確認する、といった場面でわざわざメジャーを探さなくていい。

③暗い場所でも道具を探し当てられる。本体には6箇所のトリチウムチューブ用スロットが用意されている(トリチウムチューブ自体は別売)。組み込めば、鞄の中や暗所でも本体の位置を視認しやすくなる、という遊び心のある設計だ。

RIXELの各機能を実際に使用している様子(六角レンチ、栓抜き、バール、ドライバーなど)

いつものEDCと何が変わるか

単品のマルチツールや、キーホルダーに付けているミニ工具と並べてみると、RIXELの立ち位置がわかりやすくなる。

項目一般的なマルチツールキーホルダー型ミニ工具RIXEL
機能の切り替え開閉・スライド式が多い単機能のことが多い回転式チャンバーで切り替え
六角レンチ製品による非対応が多い2〜11mm対応
バール(こじ開け)非対応が多い非対応チタン製バール機能を搭載
暗所での視認性非対応非対応トリチウムスロット×6(別売)対応
素材ステンレスが主流アルミ・樹脂が多いチタン合金(スチール版も選択可)

モノ好き向けの雑学:なぜチタンとスチールの2種類があるのか

RIXELにはチタン版とスチール版の2種類が用意されている。チタン版は全長160mm、厚み9mm、重量約90gと軽量で、汗や水分による腐食にも強く、経年でも質感が劣化しにくい。一方のスチール版は全長160mm、厚み9mmで、重量は約158gとチタン版よりずっしりしている。携帯性を優先するならチタン版、手に持ったときの重量感や価格を抑えたいならスチール版、という住み分けだ。また、本体には4〜8文字のカスタムレーザー刻印にも対応しており、自分の名前やイニシャルを刻んで特別な1本に仕立てることもできる。ポケットクリップも備えているため、EDCとして常に携帯する前提で設計されているのがわかる。

RIXEL本体とレザーケース、フラッシュライトなどのEDCアイテムを並べたシーン

開発状況と支援状況

RIXELは今回のプロジェクトがKickstarterでの初めての挑戦にあたる。実績のあるブランドと違い、量産・品質管理・海外発送を含めた実行力はこれから証明していく段階だという点は、支援を検討するうえで正直に触れておきたい。目標金額3,000ドルに対し、この記事の執筆時点(2026年9月11日)で総額5万4,053ドル、達成率約1,802%、バッカー数380人に達しており、資金面での達成自体はすでにクリアしている。とはいえクラウドファンディングである以上、初めてのプロジェクトが量産・配送の過程で遅れる可能性がゼロではない点は変わらない。購入前に必ずKickstarterの公式ページで最新の進捗を確認してほしい。

価格・配送・支援にあたっての注意点

リワードは素材・本数によって複数のプランが用意されている(価格は執筆時点、為替レート1ドル=155円換算の目安)。

プラン価格内容
Early Bird(スチール)$69(約1万695円)RIXEL スチール版 1本
Early Bird(チタン)$89(約1万3,795円)RIXEL チタン版 1本
Standard(チタン)$99(約1万5,345円)RIXEL チタン版 1本
Duo Pack(スチール+チタン)$139(約2万1,545円)スチール版+チタン版 各1本
Early Bird×2(チタン)$169(約2万6,195円)RIXEL チタン版 2本
Early Bird×5(チタン)$399(約6万1,845円)RIXEL チタン版 5本

配送先は世界各国が対象になっており、日本への発送にも対応している。価格にはVAT・関税は含まれておらず、支援者側の負担となる仕組みだ。日本向けの正確な送料・関税負担額は現時点のページ上では明記されていないため、支援前に必ずKickstarterの公式ページか、進捗アップデートで確認してほしい。配達予定は2026年10月。

キャンペーンの締切は2026年9月21日21時00分で、目標金額に達した場合のみ課金されるAll-or-Nothing方式となっている。すでに目標は達成済みだが、クラウドファンディングという性質上、実際の仕様や配送時期、送料は変更される可能性がある点は念頭に置いておきたい。

工具箱を開けに行く。予備の道具をあちこちに分散して持つ。そんな地味な手間から、そろそろ卒業してもいい頃かもしれない。RIXELは、ポケットの中で「ちょうどいい道具がない」をなくしにいく1本だ。